2023年02月10日
ここ数年でエンタープライズITとしての地位を確立したRPA(Robotic Process Automation)。近年、RPAの開発や管理、実行に関する基本機能は汎用(はんよう)化しつつあり、周辺機能も拡張されている。機能追加には幾つかの方向性があり、自動化の範囲を拡大するためのAPI連携やAI技術にまつわる機能、プロセス可視化のためのプロセスマイニングやタスクマイニング機能、自動化環境の利便性を高めるための機能などに分類できる。これらについて、企業のユーザーはどの程度期待を寄せているのか。
RPA活用の現在地を探るために、キーマンズネットは「業務自動化に関する意識調査2022年」と題してアンケート調査を実施した(期間:2022年9月14日~10月17日、有効回答数:518件)。本連載は、全7回にわたってアンケート調査から得られた結果を基に活用状況と課題、発生したトラブルなどを紹介する。なお、グラフで使用している数値は、丸め誤差によって合計が100%にならない場合があるため、ご了承いただきたい。
■目次
・RPA活用は加速か失速か 大規模調査から読み取る業務自動化ニーズの変化まず、RPA製品を選定する際に重視するポイントについて聞いた。「コストが安い」(71.2%)がトップに上がり、「UIが日本語で分かりやすい」(57.1%)、「ベンダーのサポートが手厚い」(43.1%)が上位に上がった(図1)。
1位と2位は2021年の調査と同様の結果だったが、「ベンダーのサポートが手厚い」に関しては、7位から3位に浮上した。RPAの導入は、検討フェーズから拡大フェーズに至るまで、さまざまなつまずきポイントを解消する必要がある。特に近年は全社業務を横断的にデジタル化、効率化するデジタライゼーションの一手段としてRPAを位置付ける企業も増えているが、長期的なプロジェクトを成功させるためには技術的な知見だけでなく、組織体制や人材教育といったソフト面でもノウハウが求められる。多くのユーザー企業を抱え、さまざまな観点でサポートを受けられることがベンダーの選定ポイントになっているようだ。
全社的なプロセス改革がトレンドの今、ベンダーもRPAの大規模な活用を想定した機能を拡充し、サードパーティー製品との連携強化を進めている。一方、それらの機能はユーザーにも重宝されているのだろうか。
RPAと連携している、または連携させたい技術を聞いたところ、「AI-OCRや画像認識AIを組み合わせた自動文字認識とデータ入出力」(35.5%)、「ノーコード/ローコードによるアプリ開発ツール」(34.2%)、「RPAのシナリオに対するテストの自動化、効率化」(29.7%)が上位に上がった。
AI-OCRや画像認識AIを組み合わせた自動文字認識については、RPAブーム初期から「連携させたい技術」として人気だ。紙やPDFのテキスト情報をRPAが扱える形式で抽出することで、自動化の範囲を一段階拡大できる。
ノーコード/ローコードによるアプリ開発ツールについては、2022年の調査から新たに加えた項目だが、初登場で2位にランクインした。RPAは費用対効果の問題からシステム化に適しておらず、定型的な業務の自動化に用いられることが多いが、ノーコード/ローコード開発ツールは、システム化できない非定型業務領域に貢献すると言われている。
RPAのシナリオに対するテストの自動化、効率化という項目は、近年RPAベンダーが特に力を入れている領域で、2021年の調査では1位だった。RPAのシナリオをテストする際は、テストデータの作成や、複数の分岐パターンのテストにかかる工数が問題になっている。ユーザー企業においては、これらの負担を削減する機能が注目を集めているようだ。
最後に、RPAについて「興味はある」「検討中」「トライアル実施中」「トライアル完了」「本格展開中」「本格展開完了」と回答した人を対象に、「RPAを導入したら適用したい業務は何か」を聞いた結果を紹介しよう。
1位は「ワークフローの自動実行」(46.5%)、2位は「集計レポート制作」(41.9%)、3位は「社内システム向けの巡回、定型データ収集」(33.2%)、4位は「定型メールの送信」(31.5%)、5位は「Webサイトなどの巡回、定型データ収集」(29.9%)だった(図3)。5つの項目のうち3つは2021年の調査でもランクインしていた。